近いうち、Nuits-St-Georges で特級畑ができる、らしい、と聞いた。びっくりである。
いや、この村の素晴らしい1級畑のワインの質から考えると何もおかしくない。今まで特級がなかったのだって、税金が上がることをよしとしない一部の生産者が反対して、全員の同意が得られないため、1級にとどまっている、と何かで読んだ。つまりは、造り手たちの『我々生産者が造ってきたこのワインを、まっとうな価格で提供したい。』という思いからだと思う。
3~4年前、フェヴレイの'87 Nuits-St-Georges Les Saint-Georges を頂いたことがあった。
この村に本拠を置くフェヴレイ社の、フラッグシップ的な偉大なワインである。フェヴレイの良い畑のワインは、すぐにはまったく楽しめない、熟成させてなんぼなワイン。熟成させてこそ、ようやくその真価を発揮するワインである。その当時、熟成期間としてはある意味十分。(もちろんまだまだもったと思う。)きっと、素晴らしいだろうと思う反面、'87 というヴィンテージに目がいく。あまり、というか、ほとんど、というか、その当時、初めてこのヴィンテージのワインを手にとった、くらいあまり見かけない年だった。というのも、あまり良い年、とはいえないので、じゃあ今日は、良いワインで楽しみましょーみたいなときには選ばれず、このときまで'87 と交わることがなかったんじゃないか、と思っている。フェヴレイは、この仕事を始めたときから慣れ親しんできた造り手だった。ハウスワインとして、ブルゴーニュ ブラン、ルージュを定番で使っていたし、ネゴシエーションしたものも含めて、コート ド ニュイからコート ド ボーヌ、マコネまでの様々な畑のものを開けてきた。今までのフェヴレイのワインを思い出しながら、期待と、ちょっぴり不安な気持ちで抜栓した記憶がある。年とは関係なく、ワインのリズムから、まったく閉じていたりするかも。。とか思ったような。。それが、栓を抜いたとたん、香りがこぼれ落ちたのである。『こぼれ落ちる』というのは、大げさに言っているのではなく、まさしくそんな感じで、ボトルの口のところからぼたぼたー!と、しっかりとした香りの集合体が落ちて周りに広がっていくかのようだった。ひゃー!すっごーい!!閉じてるどころじゃなくて、花開きまくってます!といった感じであった。味わいは、しっかりとある渋みがすべて果実味にくるりんと包まれて、舌触りなめらかで、そして長い余韻。その艶っぽさは、ただもうエレガントとしか言えないワインであった。'87 という年であっても、すごいワインだった!とその時、大感激した。それは、フェヴレイであったからかもしれないし、Les Saint-Georges だったからかもしれないし、その両方だったからかもしれない。まだまだ経験不足の私にはこう、とは言えないけれど、その造り手、畑の偉大さを、身をもって感じた経験であった。
そんな思い出のある Les Saint-Georges が特級畑への昇格を申請した、らしい。同じ様に1級から特級になった、隣のヴォーヌ ロマネ村のラ グランド リュは、今や1本数万の価格なので、Les Saint-Georgesの値段もきっと上がってしまうのだろう。これまでずっと、特級への移行を反対してしていたのに、なぜ今そうなのだろうか。とても知りたいところである。さて、特級になる前の今。これは投資対象になるや否や。
僕たちのソウルじゃないよ~それは~
だのになんで特級へ?